将来の公的年金はどうなるの?無くならないけど問題だらけ

将来の公的年金はどうなるの?無くならないけど問題だらけ

今回は、年金の保険料や、それを含む年金財源はどうなっていて、今後の公的年金はどうなるのか、私たちはどうすべきかといったお話をします。

保険料は引き上げられるの?

公的年金の保険料はどうなっているかと言うと、2004年の制度改正で、保険料の上限を設定して徐々に引き上げられ、2019年に引き上げが終了しました。

国民年金の保険料については、17,000円。実際の保険料は、保険料改定率(前年度保険料改定率×物価変動率×賃金変動率)によって、多少変動します。

(参考)国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?|日本年金機構

厚生年金の保険料率も、2004年から段階的に引き上げられて、2019年に18.3%で固定されました。半分は会社負担なので、被保険者の負担は9.15%です。

(参考)厚生年金保険の保険料|日本年金機構

今の制度が続く限り、保険料がこれ以上引き上げられることはありません。しかし、年金給付額と保険料の財政バランスが崩れている状態です。

年金の支給財源はどうなるの?

年金の支給財源

いまの公的年金支給財源は、保険料+基礎年金の2分の1国庫負担+年金積立金です。

2004年の制度改正では、保険料の上限設定によって財政バランスが崩れるので、「年金積立金」も支給財源に入れることになりました。年金積立金というのは、これまで納められた保険料のうち、年金の支払いに充てられなかった分の貯金です。

 この貯金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)というところが運用していて、国内外の債券・株式、不動産にも分散投資しています。2020年度末時点で、186兆1,624億円ありますが、収益は市況によって変動します。

財政バランスが取れるようになるまでは、この年金積立金を取り崩しながら、年金給付額の調整(抑制)が、ずーっと続きます。この間を「調整期間」と言います。

財政バランスが取れるまでといっても、「今から100年後に年金積立金で財源の1割負担しても大丈夫な見通しになるまで」という話です。これを根拠に「年金100年安心」と言われても、これから年金支給額は目減りしていくので、国民の生活は安心なわけがありません。

所得代替率で見る将来の年金支給水準

将来の年金支給水準

先に説明した「調整期間」が終わったときに、どれくらいの年金を受け取れるのかを表す指標として、「所得代替率」が使われています。

所得代替率とは、標準的な年金給付水準(夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金)の、現役時代の平均手取り収入に対する割合で、2019年度は61.7%です。
※(夫婦2人の基礎年金13万円 + 夫の厚生年金9万円)÷ 現役男子の平均手取り収入額35.7万円)=61.7%

現役時代の収入が手取りなのに、年金給付額は税金・保険料の支払い前ですから、生活ベースでいうと10%程度は下がるでしょう。また、単身高齢者が増えているのに、専業主婦だった夫婦を年金モデルに使い続けているのも違和感を覚えますが、とにかくこの割合を指標として使っています。

そして、「財政検証」というのを5年に一度行って、将来の見通しを立てています。

 2019年度に行った財政検証で、この所得代替率61.7%が将来どうなる見通しかと言うと、経済成長率や労働者数の推移で変わるのですが、最も楽観的なケースの経済成長率0.9%ですと、2046年度に51.9%になって、調整期間が終了する見通しです。それでも約10%下がる。

経済成長率0.0%だと、2058年度に44.5%になる見通し。そして最も悲観的な経済成長率▲0.5%だと、調整期間終了を待たずして、2052年度に国民年金積立金が無くなってしまう見通しです。

これの試算には、出生率・平均寿命・就業率・賃金上昇率・積立金の運用利回りに、それぞれ前提数値が置かれていますので、なかなか見通し通りにも行かないと思います。

実際には、50%が所得代替率の下限とされていますので、2番目と3番目のケースのように、調整期間中に50%に達した場合は、制度自体の見直しを検討することになっています。つまり、年金財政が破綻する見通しになるということです。

ちなみに、この「所得代替率」は平均のモデルですので、同じ世代でも個人個人で違ってきます。現役時代の収入差ほど、年金受給額の差はありませんので、高収入だった人は所得代替率が低くなり、低収入だった人は所得代替率が高くなります。

いずれにしても、現役時代の収入に対する年金受給額に、世代格差が広がることは間違いありません。

(参考)2019年財政検証結果レポート | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省

今後の方向性と、私たちがすべきことは

将来設計

今後は、労働人口の減少を少しでも食い止めるために、高齢者の雇用が促進されます。

いまは65歳定年、もしくは65歳までの継続雇用が義務化されていて、70歳までの雇用が努力義務となっています。

また、年金の繰り下げ受給も、2022年4月から、75歳まで繰り下げ可能になりました。70歳までの繰り下げで42%増額、75歳まで繰り下げると84%増額になります。

私の考えは、できる限り積極的に仕事を続けて、繰り下げは活用すべきと思います。ただし、身体を酷使する仕事や、楽しくもない仕事は続けられません。

やりたいことを収入にして、ストレスフリーな継続収入がベストです。現役時代から意識して活動することをおすすめします。

現役の若い世代は、個人年金や企業年金を活用することと、余裕があれば長期投資もするべきだと思います。

楽観的に考えると、AIやロボットがGDPを押し上げるようになれば、国費を無条件に支給する「ベーシックインカム」の方向へ進むかもしれません。そんな世の中になれば良いですね。